エリート御曹司が花嫁にご指名です
「彼女はダメよ。桜宮専務ファンですもの。公私混同しちゃうわ」
「ファンだとしたら、しっかり従事するのではないでしょうか……」
 
 私のように。

「桜宮専務と汐里さん、お似合いなのに。社長も結婚させたがっていたでしょう?」
「……結婚は当人の気持ちが大切ですから」
「確かにそうだけど。当事者同士が盛り上がって結婚しても、離婚する場合もあるし」

 三和子さんは自分のことを例に挙げて、綺麗な顔に苦笑いを浮かべる。

「汐里さん、決心は固いの? どうしても?」
「はい。これから婚活を頑張ります」

 私はきっぱり口にして、決心は変わらないと意思表示する。それは自分に言い聞かせる言葉でもあった。



 その日、私の帰宅を待ち構えていたように、玄関横にある書斎からお父さんが出てきた。

「汐里、話がある。リビングへ来なさい」
「はい」

 私はバッグを肩から提げたまま、お父さんの後についていく。リビングのソファにはお母さんもいる。

「おかえりなさい。座って。お父さんがお見合い相手を選んでくれたのよ」

 娘の気が変わらないうちに、お父さんは探したみたい。ローテーブルの上には一枚の写真が置かれている。


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