エリート御曹司が花嫁にご指名です
バッグを持ったまま、両親が並んで座る対面に腰を下ろした私の前に、お父さんが写真を滑らす。
「名前は白石(しらいし)克美(かつみ)くんといって、年齢は三十二歳。渡会(わたらい)医科大学付属病院の麻酔科医だ」
 
 医師会のパーティーで知り合ったというお父さんの話を聞きながら、写真に目を落とした。

 腰から上の、わざわざこのために撮ったかのような写真だった。
 
 彼は短髪で黒ぶちの眼鏡。

 スーツを着ている体躯は細く見え、真面目そうな印象だ。
 
 私は白石さんを見てもピンとこなかった。
 
 この人と、話が進めば結婚……。

「どうだ? 見た目ではわからないが、男らしいんだ」

 写真を見つめたままの私に、お父さんが補足する。

「ん……会ってみないとわからない」
「白石くんは、十三日なら都合がいいと言っているんだが、汐里はどうだ? 日曜日だし、もう夏季休暇じゃないのか?」

 数日後の日曜日だ。急なお見合いに、私の頭がついていかない。

 私がお見合いをすると言ったのに……。



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