俺と、甘いキスを。

「はぁ…はぁ…」
私は研究所への道を走る。
電話を終えた私は、急ぎスマホと上着と鞄を手に取って「研究所へ行く」と言って家を出た。
右京誠司と話すのは、右京蒼士の研究室で会った時以来だ。優しい笑顔と安心感を与える話し方に、「大人の男性」がピッタリ当てはまる人だと思った。

しかし電話の彼は、酷く焦っていた。

『用事があって蒼士に電話をして話してたんだけど、途中で大きな音がして彼の声が聞こえなくなったんだ。柏原さんから「蒼士はここ数日、AIドールの修復でほとんど寝ていない」と聞いていたから、ついでに様子を聞こうと思ったんだ。花ちゃんは蒼士がどんな状態か知ってる?』

もしかしたら、どこかで倒れているかもしれない。

「もうっ。だからちゃんと休んでって言ったのに!」

姿の見えない相手に文句を言いながら、やっと見えた研究所へと駆け込んだ。

< 104 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop