俺と、甘いキスを。

明後日は花は柴本貴臣とお見合いをする。今更キャンセルなんてできない。彼らの、娘の気持ちがわかっていても、見合いをさせなくてはいけない複雑な気持ちが顔から浮かんでいた。

「右京さん。娘が三十を過ぎた年になっても親バカだと笑うでしょうが」
花の母は眉を下げ、泣きそうな顔をする。
「花は一度、男性に酷い目にあって心に傷を負っています。私たちは今度こそ、本当に幸せになって欲しいと思ってるんです。あの子は優しい子です。私たちに気を遣って、柴本さんと結婚するかもしれません。もし、右京さんが結婚されていなかっ……」
気持ちが抑えきれなくなったのか、彼女は席を立つとダイニングから出ていってしまった。


みんなが花の心配をしている。

俺だってこの状況を何とかしたいと思っている。しかし自分のことがはっきりしない今、下手なことが言えない。
焦ってはいけないと頭でわかっていても、気持ちが逆を向いてしまう。
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