俺と、甘いキスを。
「…ん」
目が覚めると、頭がぼんやりしている。最初に見えたのは、真っ暗でほんのりと灯るライトだった。しばらくその輝きを眺めていて、だんだん記憶が蘇ってくる。
ちなみが帰ってから、私はいつの間にか寝てしまっていたのだ。
「あっ!」
慌てて起きた。
あの階段で柏原さんが現れ、それから事務長がちなみを連れてやってきた。
右京蒼士はちなみに私を医務室に連れていき、その後右京研究室に送るように頼んでいた。
滅多に無いことだが、柏原さんは研究室のコーヒーメーカーの調子が悪いとかで、二階にコーヒーを買いにやってきたところで私たちに遭遇したそうだ。私たちのトラブルに巻き込まれてしまった彼は、コーヒーのことも踏まえて気の毒としか言いようがない。
ちなみと私がその場を離れた後、事務長と柏原さん、そして右京蒼士は泣き止まない峰岸真里奈をミーティングルームへ連れていった。右京蒼士が事の流れを説明したらしいが、果たしてあの時の私との会話をどんな内容にすり替えたのか。
医務室から右京研究室にやってきちなみは、案の定「ガード」に不審者呼ばわりされた。驚きながらも珍しそうに「ガード」をみるちなみに、私は「ガード」に「ちなみは不審者じゃないよ」と教えた。
「ガード」は「ちなみ」を記憶するかのように繰り返し呟いていた。
初めて右京研究室の内部に足を踏み入れたちなみは、部屋中を見渡しながら「ここですね」と、言われたとおりのドアを開けた。
ベッドとクローゼットらしき扉がある、部屋の奥にもドアが見える六畳くらいの部屋だ。
ちなみはベッドの際に私のカバンを置いて、
「彼はよく研究所で寝泊まりをする、と聞きましたが本当のようですね」
と、ベッドに目をやった。