【女の事件】豚小屋

第7話

7月27日のことであった。

ところ変わって、ゆういちろうが勤務している職場の事務所にて…

この日、ゆういちろうは飯田で暮らしている姉夫婦から8月5日と6日は実家に帰っておいでと言う電話を受けた。

なので、上司に休暇申請を出すための申請書を持って上司が出勤して来るときを待っていた。

それからしばらくして、上司が出勤して来た。

ゆういちろうが休暇申請書をお願いしようとしていた時であった。

上司が、ものすごく言いにくい表情でゆういちろうにお願いをしてきた。

「ゆういちろうさん、ちょっとかまへんやろかなぁ…」
「何なのですか課長!!」
「ああ…大したことじゃないのだけどね…」
「課長!!なんで朝から言いにくい声で言うてくるのですか!?大したことじゃないってどういう意味なのでしょうか!?」
「ああ、ゆういちろうさん…こらえてーな…こらえてーな…」
「だから、課長は私に何をお願いしたくてこんなことを言うて来るのですか!?」
「ゆういちろうさん…」
「私は、8月5日と6日は休暇をくださいとお願いするために休暇申請書を出そうとしていたのですよ!!」
「ゆういちろうさん…気持ちはわかるけど、8月5日と6日の予定は入っているかなぁ?」
「課長!!部下をグロウするのもいいかげんにしてくださいよ!!」
「困ったなぁ…困ったなぁ…」

課長さんは、ますます言いにくい声でゆういちろうに言うた。

「ゆういちろうさん、8月5日と6日の予定が空いていたらでいいけど…札幌までいってくれへんやろか?」
「札幌へ行けって…それって出張しろと言うことですか!?」
「ゆういちろうさん…飛行機のチケットとホテルの予約取ってあるから、札幌へ行ってくれぇ~…8月5日は、取引先の会社の社長さんのひとり娘さんとおむこさんの結婚披露宴があるのだよぅ…」
「だから札幌へ行けと言うのですか!?」
「こらえてーな…こらえてーな…本来だったら、次長が出席する予定になっていたけど、次長が同じ日に北軽井沢のゴルフ場へ行く予定を入れたから辞退すると言うて来たのだよ…」
「それは課長が代行で行っくことになっているのでしょ…なのに、私に求めてくるなんておかしいですよ!!」
「こらえてーな…その日…おいごの結婚披露宴に出席する予定が入ったのだよ…嫁はんがバイシャクニンを引き受けたから、札幌へ行けなくなったのだよ…」
「だから、どうしてほしいと言うのですか!?」
「だから、ゆういちろうさんにお願いしているのだよ…代わりに結婚披露宴のスピーチも読んでほしいのだよ…原稿なくてもいいからひとことおめでとうだけ言えばいいから、スピーチを読んでくれぇ~」

課長さんは、女々しい声でゆういちろうに札幌へ行ってほしいとお願いしていた。

ゆういちろうは、なげやりな声で『分かりました。要はおめでとうのひと言だけ言えばいいのでしょ!?』と返事した。

課長さんは『おんにきるよ…ありがとう…お礼はきちんとするから…』とゆういちろうに肩をたたきながら言った後、くちぶえをふきながらたばこを買いに行った。

ゆういちろうは、課長さんからグロウされたと思い込んでいたので、過激な行動に出た。

事務所のドアにかぎをかけたゆういちろうは、窓のブラインドを閉めて、課長のデスクの引き出しにある職場のクレジットカードを抜き取って、おりたたみのさいふにしまいこんだ。

この時、ゆういちろうの心は大きく壊れていたので、さらに過激な行動に出る危険性をはらんでいた。

ゆういちろうは、課長さんからグロウされたことに腹を立てていたので、職場放棄をした。

ゆういちろうに任せていたお仕事がストップしたので、職場はものすごく困っていた。

ゆういちろうさんがいないとできない仕事があると言うのに…

ゆういちろうさんはどこへ行ったのかなぁ…

ところ変わって、挙母町の家にて…

ゆういちろうは、部屋の中で浴びるように酒をのんだ後、大きなイビキをかいて寝ていた。

家の電話は線が切れていたので、電話がつながらなったのと同時に、ケータイの電源もオフになっていた。

電話がつながらない…

ケータイの電源が入っていないから、ケータイもつながらない…

どうしよう…

職場の人たちは、ものすごく困っていたのでタイショすることができない。

その一方で、飯田で暮らしているゆういちろうの姉夫婦は、ゆういちろうが職場放棄をしていると言うことは知らなかった。

仕事の引き継ぎがまだなんだと言うて、のんきにかまえていた。

ところ変わって、飯田市北方にあるゆういちろうの姉夫婦の家にて…

ゆういちろうの姉は、おとなりさんの家からコーチン(鶏肉)をいただいたので、晩ごはんはコーチン鍋にするとよしえに言うた。

よしえはこの日、パートがお休みで家のお手伝いをしていた。

昼3時過ぎに、お鍋に入れる具材の買い出しに出かけた。

ところ変わって、JR飯田駅の近くにあるピアゴ(スーパーマーケット)にて…

よしえは、買い出しのあとレジに並んで精算待ちをしていた。

この時、豊田市で暮らしていた時におとなりさんだった奧さまがよしえに声をかけた。

「あら、よしえさん。」
「あら、挙母(ころも)で暮らしていた時におとなりさんだった奧さま。」
「お久しぶりねぇ…いつこっちに引っ越しをしたのかなぁ?」
「いつって…先週あたりに引っ越しをしたばかりよ。」
「そう…それで、挙母にいたときに働いていた病院の調理場はどうしたのよ?」
「やめました。」
「やめたん?」
「ええ…社長がものすごくいいかげんな人だったから…他の従業員さんたちも次々とやめていたから、アタシもやめたわ。」
「例のフードサービスをやめたね…」
「アタシがやめる前のことだけど、社長が調理場へ来て、味見だと言うて味見をした後に歯形がついている食材をおなべに戻したことが原因で患者さんたちが激怒していた事件があったのよ…それでやめたのよ。」
「そうねぇ…あんなふけつな会社なんかやめてトーゼンよ…問題のフードサービス会社のことだけど…もうあかんなったわよ。」
「えっ?つぶれたのですか?」
「アタシもかつて問題のフードサービス会社のパートで、別の病院の調理場で働いていたけど…社長は経営の仕方がゼンゼンわからん人間なのよ…社長のおとーさまが甘やかすだけ甘やかしたクソバカだから、あかんなったんよ…」
「あの~…つぶれたと言うのはどういうイキサツでつぶれたのですか?」
「よしえさん、知らんかったん…いつだったか忘れたけど、きのうあたりだったかしら…問題のフードサービスが入っていた3階建てのテナントビルが大爆発を起こして崩落したのよ…場所はめいてつの豊田市駅の裏側のビルが密集している地区だったかしら…」

よしえはこの時、奧さまから問題のフードサービスが入っているテナントビルで大きな爆発を起こして大規模な崩落を起こしたテロ事件があったことを聞いた。

問題のフードサービスの会社は、テロ事件で倒産した。

中にいた社長が、がれきにうもれて亡くなった。

ことの次第を聞いたよしえは、気持ちが動転していた。

奧さまは、よしえにテロ事件のくわしいイキサツを話した。

「大きな爆発の火元は一階のラーメン屋さんだったのよ…最初はガスが爆発したことが原因だと思っていたけど、今日になって、店内でやくざ同士がもめ事を起こして、その際にやくざの男が持っていた手榴弾を投げたのよ…それが原因で大きな爆発が発生したのよ…問題のフードサービス会社はテナントビルの3階にあったけど…大規模な崩落は、一階の部分がより激しい炎が原因でビルの支柱が焼け落ちたことが原因で崩落を起こしたのよ。」
「そんな…」
「火元のラーメン屋さんだけど、もめ事を起こしたやくざの男が用心棒をしていたと言ううわさが流れていたわよ…問題のフードサービスの社長も、セガレがやくざのもめ事を起こしていたイキサツがあったし、やくざがらみのうわさがたくさんあったみたいよ…」
「そんな…」

よしえの前にいた奧さまは、レジの番が来ましたのでレジの精算をしていた。

よしえは、前にいた奧さまからの話を聞いたので、背筋が凍りついてその場から動けなくなった。

夕方6時頃のことであった。

ところ変わって、北方にあるゆういちろうの姉夫婦が暮らしている家にて…

家の居間には、よしえとしゅうさくと義姉夫婦がいて、4人でコーチン鍋を食べていた。

「しゅうさく…コーチンたくさんあるからいっぱい食べるのだよ。」
「うん。」

義兄は、義姉にこう言うた。

「ところで、豊田で暮らしているゆういちろうから連絡はないのか?」
「まだ連絡は来ていないけど…」
「困ったなぁ…仕事の引き継ぎはいつになれば完了するのか(ブツブツ…)」

義兄は、ゆういちろうがいつになれば仕事の引き継ぎを完了させて飯田へ帰って来るのかと言うてブツブツと言ってたので、よしえはより激しい不安に襲われた。

いつになれば、家族みんなで暮らすことができるのか…

いつになれば、ダンナは飯田へ来るのか…

もう待てない…

もう待てない…
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