【女の事件】豚小屋

第9話

さおりが再び強烈なレイプの被害に遭ったと言うのに、直家とりつよとなおみは自分たちのことしか頭にないので、無関心の度合いはさらに高まっていた。

直家は、亡くなったきょうだいが残した借金を裁判所に破産宣告の手続きを申請することに親族たちが消極的になっているから、困っている。

りつよは、一生懸命になってパートをがんばっているのに、お給料が1円も上がらないからイラついている…

なおみは、郵便局のお仕事だけでは足りない分を複数のバイトで稼いでいるのに、生活が上向きにならないからイラついている…

そうしたイライラが家庭内に蔓延(まんえん)している中では、さおりの心の傷はより大きく広まっていた。

さおりを助けてあげたい…

でも…

自分たちのことで手がいっぱいだから、時間がない…

直家とりつよとなおみは、さおりを助けなければならないことを分かっているのに、いいわけばかりをならべていた。

だから、さおりの気持ちは家族から離れていた。

そんな中であった。

さおりが再び強烈なレイプの被害に遭った事件は、容疑者の身元が分からないので捜査が難航していた。

その中で、沼隈は再び過激な行動に出たようだ。

10月24日のことであった。

場所は、昭和区内にあるセルビデオ店にて…

事件は、ノレンの奥のコーナーで発生した。

この時、モンキー顔の若い男がビニール袋に包まれている品物を見てコーフンしていた。

その現場を沼隈が目撃したので、モンキー顔の若い男に血相を変えて詰めよった。

「手に持っている品物を出せ!!」
「なんだよオッサン!!」
「いいから出しなさい!!」

沼隈は、モンキー顔の若い男から例の品物を取り上げた後、ビニール袋に包まれている中身を見た。

ビニール袋の中には、ドロでぐちゃぐちゃに汚れて、鋭利な刃物でズタズタに切り裂かれたキャミソールが入っていた。

その上に、レイプの被害を受けたあとの写真とメッセージカードが封入されていたので、怒り狂っていた沼隈は、店員さんを呼んだ。

「ああ…何かお探しでしょうか?」
「オラ!!オドレの店のオーナーをここへ呼んベ!!」
「あの~、どちら様でしょうか?」
「警視庁の捜査1課の刑事だ!!ノレンの奥のコーナーにこんな品物があった!!」
「それがどうしたのでしょうか?」
「すっとぼけるなよ!!ぶっ殺してやる!!」
「ヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ…」

沼隈は、刃渡りの鋭いナイフを店員に向けてイカクしながら怒鳴っていた。

「例の品物は、レイプの被害を受けた女性が着けていた下着だ!!オドレらの店にレイプ魔とつながりがある人物がいると聞いた!!」
「なんなのですかあんたは!!店に言いがかりをつけるのであればケーサツを呼びますよ!!」
「呼べるものなら呼べ!!オレには警察庁のえらいさんに知人がいる…知人の知人にヤクザがいるのだぞ!!オドレら、逃げるなよ…逃げたらぶっ殺してやる!!」

怒り狂った沼隈は、店の中を荒らし回っていた。

この時、店の奥の倉庫に例の品物と同じタイプの品物が山のように置かれていたのを沼隈が見たので、ドカーンと激怒した。

沼隈は、端にいた店員数人をナイフで刺して殺したあと、生き残った店員に例の物を持ち込んだ男の客のことを吐けと凄んだ。

生き残った店員が、例の物を持ち込んだ男は有松で暮らしている問屋のわかだんな・忠家だと沼隈にハクジョウした。

それを聞いた沼隈は、生き残った店員を刺して殺したあと、その場から立ち去った。

それから70分後のことであった。

忠家は、大高城跡公園でお茶屋遊びに夢中になっていた。

そこへ、愛知県警の捜査1課の刑事8人が任意同行を求めたので、忠家はその場から逃げ出した。

その場から逃げ出した忠家は、500メートル先の敷地でやみ討ちに遭った。

「グワーッ」

忠家は、敷地内に潜んでいた沼隈に暴行を受けた後、刃渡りの鋭いナイフで刺されて殺されたあと、遺体をズタズタに切り裂かれた。

しかし、あとになって枇杷島で発生した連続レイプ事件と忠家がムカンケイであったことがわかった。

愛知県警は容疑者の身元の割り出しに全力をあげているが、捜査は長期化するようだ。
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