~fault~私だけが・・・
振り向き一瞬、匠の顔を見て一応朝の挨拶をしてシャワーに行くって匠の返事も聞かずにダッシュでバスルーム駆け込んだ。
シャワーを浴びていると段々と気持ちが落ち着いて、薄っすらな記憶が徐々に繋がり始めていく。
匠のバイト先の店を出て楽しかった時間が急に匠とふたりきりになって、また央の事が浮かぶのはしかたがないことで、寂しいって言いながら泣いたんだと思う。
実際いまも央の事を思うと寂しくて仕方がない。

私に泣くなよって言いながら匠まで泣き出して向かい合いながらお互いの涙を拭っては泣いて。
そんなことをしていたら、おかしくなって顔を見合わせて笑った。
笑いが止まらなくなった私が立ち上がりフラフラしながら歩き出すと何も言わずに横に並んだ匠。
泣きながら笑ってブツブツ言う私の腰を支えながら・・・

帰りたくないって思ってた。
ずっとずっとそう思ってた。

だから、また飲むか?って言ってくれた匠の言葉に心が弾んだのも事実。
4人とは2人っきりで出かけたり飲みにも行くことはあった。
でも匠とは一度もない。
匠のバイト先にだって4人は良く行っていたけど私は一度も誘われたこともないから自分から行きたいとも言えずだった。

楽しくないわけがない。
家からはどんどん遠のいて見上げたそこは東京でも名の通ったホテル。
ㇲって離れた匠の手。
何を言うわけでもなく振り返るでもなく中に入って行った匠の背中を見ていた。

まっすぐフロントへ向かった匠の横に並ぶとふわっと重なる私の右手と匠の左手。
書類に名前を書いてカードを出し支払いを済ませる匠の横顔を見ていた。
カードキーを受け取ると繋がった手をそのまま引かれて部屋の前、またㇲって離れた手がドアを開け中に入って行った。
ドアは大きく開かれたまま・・・


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