シンフォニー ~樹
37

みんなの寂しさを取り除く 嬉しいニュースを聞いたのは 風が涼しくなる頃だった。


お祖父様の 四十九日法要の日。

納骨をして みんなが 寂しさを感じていた時。
 


「こんな時なんだけど。でも、こんな時だから。俺達 赤ちゃんができました。昨日 病院にも行きました。」

精進落としの食事の席で 健吾の発表に みんなの歓声があがる。
 

「本当なの?」

最初に 驚きの声を上げたのは 麻有ちゃん。

「うん。来年の6月が 予定日だって。まだ先だけど。」

絵里加は 恥ずかしそうに言う。


「体調は 大丈夫なの?仕事 辞めた方がいいんじゃない。」

母も心配そうに言う。
 
「順調よ。つわりもないし。家にいても退屈だし 軽い仕事だから。もう少し続けたいの。」


絵里加は智くんと父を見て言う。
 

「体調を優先して、絶対に 無理はしない。」

智くんより先に 父が言う。

絵里加は、ニッコリと頷く。
 


「久しぶりの赤ちゃんね。可愛いでしょうね。」

とお祖母様も 明るく言う。
 
「お祖父様の 生まれ変わりよ。絶対 男の子だわ。」

絵里加は 嬉しそうに言う。

みんなが 明るく 前向きになれるニュース。


もう少しだよ 恭子も。

待っていてね。


そんな気持ちで 樹が見つめていると 恭子も樹を見る。

はにかんだ笑顔で。





< 136 / 166 >

この作品をシェア

pagetop