シンフォニー ~樹

「そうだ。こんな時だけど、こんな時だから。」

と父は 健吾の真似の 前置きをして、
 

「樹達の新居 探そうと思うんだけど。松濤は なかなか無いんだよ。どの辺までなら住めるかな。」

父の 突然の言葉に 樹と恭子は 顔を見合わせる。
 

「あの 私 今と同じように 一緒に住んではダメですか。」


樹を見た後で。

恭子はみんなに言う。
 


「ケンケンと絵里ちゃんみたいに 二人で新居に住みたいでしょう。」

母が 驚いた顔で言う。

父や智くん達も頷く。
 

「私、一人じゃ不安だから。お母さんの側で 色々教えてほしいです。今のままで。もし迷惑じゃなければ。」


恭子の言葉は 意外で みんなが驚いていた。
 

「いずれは 一緒に住むとしても 最初は二人がいいんじゃない。それならマンションでも。」

母は 自分達のことを思い出して言う。
 

「最初から 一緒じゃダメですか。」

恭子は不安そうに言う。


「私達じゃなくて 恭子ちゃんよ。」

と母が言うと、
 

「私 このまま一緒に住みたいです。もし許してもらえるなら 今からずっと。大学にも このまま行きたいです。」

恭子の言葉に みんなは 胸を熱くする。
 


「一度、間宮さんとも相談させて。お父さん達の意向もあるからね。俺は すごく嬉しいよ 恭子ちゃん。」

父の言葉に みんなが頷く。

母もお祖母様も 恭子と 一緒にいたいと思っているから。

樹は 感謝と愛のこもった目で 恭子を見る。

ありがとう。恭子は最高の奥様だよ。


声に出さなくても、恭子に届くと信じて。



 
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