シンフォニー ~樹
43

学校があると 家事ができないからと 平日の夕食作りは 積極的に手伝う恭子。
 
「恭子ちゃん たまには 友達とお茶飲んだり 寄り道してきてもいいのよ。」

母は、恭子が 無理をしていないか 心配で言う。
 
「大丈夫です。友達とは 学校で十分話せるから。」

恭子はニコニコと、首を振る。
 

「家と学校の往復で。たまには 息抜きもしたいでしょう。」

母は 若い恭子を気使う。
 
「日曜日に 樹さんが 色々連れて行ってくれるもの。」

恭子は嬉しそうな笑顔で言う。
 
「それに私 家族が大好きだから。すぐに帰りたくなっちゃうの。」

と照れた顔で続けた。
 

「ありがとう。本当に可愛いわ。それに恭子ちゃん お料理が好きで 私も大助かりよ。」

母の言葉に、お祖母様も頷く。
 
「絵里ちゃんに 教えてもらっているの。絵里ちゃん お料理だけじゃなく 整理整頓のコツとか 色々 教えてくれるのよ。」

麻有ちゃん譲りで 家庭的な絵里加。

恭子は、絵里加に憧れているから。
 

「樹もケンケンも 良い奥様に恵まれて 本当に幸せね。」


母も、嬉しそうに言う。


「樹さん、お仕事 頑張っているから。私は 家のこと頑張って、樹さんを支えないと。」

恭子は笑顔で、でも 強い目で言う。
 
「恭子ちゃん、嬉しいわ。でもゆっくりでいいからね。私達が 元気なうちは まだ甘えていていいのよ。」


母は、若い恭子が 経営者に 嫁ぐ自覚に感動していた。

自分が 結婚した時は 恭子のような決意は なかった気がする。


恭子は 経営者の家で 育っているから。

育った環境に 近いから 自然と 受け入れることができるのだろう。


樹と恭子、健吾と絵里加。

本当に良い縁だったと、しみじみと思った。



< 151 / 166 >

この作品をシェア

pagetop