シンフォニー ~樹
13

ディズニーの袋にいっぱいの お土産を持って 恭子は 改札口から出てきた。

気を効かせて、渋谷駅に着く時間を LINEしてきた恭子。

夜の駅で 樹を待つのが怖いのか。


『はいはい。俺が待ちますよ。』

でも、樹は いそいそと家を出る。
 

少し照れたような顔で、樹に手を振る恭子。
 
「ありがとうございます。」

と樹の前で 元気よくお辞儀をして。

樹が笑いだすと、
 

「本当は、ちょっと怖かったから タクシーに 乗るつもりだったの。」

と肩をすくめた。
 
「楽しかった?」

樹は優しく聞く。
 
「超楽しかったよ。何回行っても 楽しいよね、ディズニーは。」

と嬉しそうに話す。
 
「暑いし、並ぶし。大変じゃない。」

樹が言うと、
 
「夢の国だから、混むのは 仕方ないよ。でも今日は 少し涼しかったから。今度、お兄さんも行こうよ。」

無邪気な恭子に 樹は声を出して笑う。

この子に振り回されて ディズニーランドを 歩く自分を想像して。


不満気に樹を見つめる恭子に、
 
「俺、振り回されそう。」

樹は、少しだけ言ってしまう。

夏の夜だから。

恭子と、ディズニーの魔法に かかってみる。

一瞬、真顔になった後 恭子は 花のような笑顔を 見せてくれる。
 


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