シンフォニー ~樹

「驚き過ぎて、上手く言えないけど。基本的には賛成。ただし条件付きでね。」

有能な経営者は、とても合理的な返事をする。

樹は黙って続きを待つ。


「まず、大学生になるまでは 大人の付き合いは しないこと。それと、大学は 必ず卒業すること。守れるかな。」

樹と並んで 神妙な顔で座っていた恭子が キラキラした目で頷く。
 
「はい。必ず、守ります。」

樹は深く頭を下げる。
 


「実は 恭子が 樹君と結婚できればいいなって 思ってはいたんだ。ただ急で驚いたよ。」

お父さんは、優しく 言ってくれる。
 
「ありがとうございます。高校を卒業してから 付き合うつもりだったのですが 恭子ちゃん 可愛くて。待てずに 告白してしまいました。」

全部を 自分が背負う樹に 恭子は 感動の目を向ける。
 

「私が お兄さん好きになって しつこく連絡したから。」

恭子は お父さんに 言ってくれる。

お父さんは頷いて、
 
「そんなことは、わかるよ。お父さんが心配なのは 恭子の気持ちが 変わることだよ。」

と言う。恭子は、大きく首を振り
 

「そんな いい加減な気持ちで お父さんに 話したりはしないわ。お兄さんのこと よく見てきたから。信用できるから。だから好きになったの。」

一生懸命 言ってくれる恭子に 樹の心は熱くなる。
 

「恭子ちゃん、優しくて 思いやりがあって。一緒にいると とても癒されます。ずっと大切にして 二人で幸せになりたいです。」
 

「良いご縁だよね。健吾達にとっても。樹君 恭子を宜しく頼むね。」

樹は 胸がいっぱいになって 言葉に詰まる。
 

「ありがとうございます。」


真剣な目で 頭を下げる樹を お父さんは 温かく見つめてくれた。
 



< 64 / 166 >

この作品をシェア

pagetop