シンフォニー ~樹
26

夏休みは アルバイトを頑張っている 健吾と絵里加のご褒美に 樹達も便乗して 4人でハワイに行く。

小さな頃から 一緒に旅行していた絵里加と こんな形で また旅行できるとは思わなかった。
 

旅行中の4人は どちらのカップルも 負けないくらい熱々だった。

海外の解放感が 4人を自由にして 一緒にいても平気で 触れ合ってしまう。

みんなが、恥ずかしいとも思わずに。


「俺達 日本に帰ったら 思い出して恥ずかしくなるよ。」

恭子を抱きしめたまま 樹が言うと、
 
「旅の恥はかき捨て でお願いします。」

健吾も、絵里加を胸に抱いて言う。
 

「仕方ないよね、こんな可愛い子と 一緒にいるんだもの。」

と言う樹に頷いて、
 
「はい。若さは罪です。」

と健吾も答える。
 


二人だけの旅行とは 違う楽しさ。

信用できる 身内と一緒だから。

ずっとこうして 育ってきた樹は この旅行を とても嬉しく受け止めていた。


恭子は 健吾を “お兄ちゃん” と呼び 、健吾は樹を “お兄さん” と呼ぶ。

その複雑な4人に 絵里加はケラケラと笑い
 

「ややこしいから 恭子ちゃんも ケンケン って呼んだら?」と言う。
 
「恭子に ケンケンとは、呼ばせないよ。」

膨れた顔の健吾を みんなで笑う。
 

「最近 恭子ちゃん すごく綺麗になったよね。大人っぽくなって。」

絵里加は、とても優しい目で言う。
 
「本当?絵里ちゃんに 言ってもらうと すごく嬉しい。」

瞳をキラキラさせて、恭子は喜ぶ。


持前の優しい思いやりで 恭子に お姉さんらしく 気を配る絵里加。

素直な憧れの瞳で 絵里加を 真っ直ぐ見つめる恭子。


二人が 顔を寄せて 楽しそうにヒソヒソ、クスクスしている姿は 樹と健吾を とても幸せな気持ちにしてくれる。
 

健吾もまた 樹を信用して 兄のように慕ってくる。

健吾の 明るく前向きな性格に 樹はとても好感をもっている。


長く付き合っている 気の合う友人のように。

元々仲良しだった4人は この旅行で もっと4人の時間を好きになる。
 
 


< 92 / 166 >

この作品をシェア

pagetop