松菱くんのご執心
「で、なんでここに居座ってるんですか」


「んなの、サボりに決まってるだろ」



言ってることも最悪なのに、態度はもっと大きかった。



 そういう目の前のおっさんを見てると、

この人は俺の悩みや、そこら辺に転がっているちっぽけで、しょうもない事柄とは、無縁の存在だと思った。



 「人生サボってなんぼだ」



そう彼自身も言うので、俺はなんというか、逞しいなと、羨ましくなる。



 まあでも、怪しい男に変わりはない。


こんな人が営業やお堅い公務員のはずがないし、

ましてや黒のスウェットにジーパンのラフな格好。



そして極めつけに、首から青く光る石のネックレスをつけていても、何も言われない職業ってなんだろうか。



ちょっと考えてやめた。
彼の人柄が、許されるファクターになっているのかもしれないとふと思ったからだ。



なんで許されるのかは、この人だからだろうと思うと妙に納得できた。

何をやっても受け入れられる人と、残念ながら受け入れられない人がいるんだ。


考えたって仕方ない。



「つまり仕事中なんですね。それなら早く仕事に戻ってください。
さっきも言いましたけど、俺、落ち込んでるんですよ。一人にしてください」



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