松菱くんのご執心
「あれ、そんなにびっくりした?」


「ほ、ほんとにやめてよ。不審者かと思った」


「みかさと最近話せてないから、後ろ姿見つけて、つい」


頭をかいて照れくさそうに爽がはにかむ。



「ついじゃないでしょ、もう」


「一緒に帰ろう」そう言って爽が歩き出す。


 爽はわたしの家の斜め向かいに住んでいて、たまに一緒に帰ることもあるが、


松菱くんと爽のいざこざ以来、学校で話すことは愚か、帰りが一緒になることもなかった。


避けていたとかではなく、機会がなかっただけだと思う。



「なんか、久しぶりな気がする、みかさと帰るの」


「そうかな」


「そうだよ、だって教科書借りに行って。
それを返しに行った時から全然会わないんだもん。……まさか、避けてたとか」



「それこそまさかだよ。避けてない」


押し黙ってしまいそうになったが何とか返事した。


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