松菱くんのご執心
「あのさ、爽……」


「なに?」


「ずっと思ってたんだけど、爽の態度良くないと思うよ」


「え?」


「松菱くんに対する態度。なんで、そんな風に邪険にするの? 彼に何かされた?」


率直な疑問だった。


つぎに顔を合わせた時には聞こうと心に決めていたことだ。



「彼に? そうだね。
されたよ、大事なものを奪われた。俺の大事なものを」


わたしはぎょっと目を見開く。
爽の私を見る目が怖かったからだ。



「大事なものって……?」恐る恐る聞く。


「それは言えない。それを今のみかさに言ったところで俺にメリットがあると思えないし」


淡々と話す姿はわたしを凍りつかせた。爽はこんな人だったか。

わたしが今話している人は別人ではないのかという仮説まで浮かんでくる。



そんなことは、まるでない。


彼はわたしの幼なじみの「早瀬 爽」本人だ。


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