松菱くんのご執心
スーパーは学校から少し歩き、大通りにでたところで右に曲がった位置にある。
「任せてって言ったけど、ダンボールあるかな。
今日に限ってなかったとか、面白くない結果になって欲しくないね」
「あるだろ。スーパーにダンボールが余ってなかったら、それはそれで問題だ。
仕入れをしていないスーパーなんか、陳列棚が穴だらけだぜ」
日中の歩道を歩く松菱くんは、初めて会った時のようにのらりくらりといった具合いだった。
「違うよ、もう回収された後かもってこと」
「ああ、そういう事か」
賢いのか、天然なのか。
掴みどころのない彼は、
「帰りはダンボール持つだろ?」
と切り出した。
「持つねえ」
「だからさ、今のうちに手、繋いでもいいか?」
照れくさそうに松菱くんは聞いてくる。
ちらっとこちらを見て、遠慮気味に手を出す。
わたしの手を掴んでもいいのか、それとも良くないのか、
松菱くんの手は迷子になって宙を彷徨っていた。
「いいよ」と返事してしまう。
そんなわたしはもう、松菱くんに完全に絆されている。