未明の三日月
達也に不満はない。
都会育ちの達也は クールで淡々としていた。
すべてがスマートで、大学の頃 付き合った地方出身の彼とは違う。
美咲は最初、達也のそういう所に 惹かれた。
でも会う度に、惹かれた部分が 違和感になっていく。
具体的に 嫌な所は何もないのに。
達也の 都会的なスマートさが、美咲に 居心地の悪さを感じさせる。
『まあいいか。別に結婚する訳でもないのだから。』
そんな風に思いながら、達也との交際を続けていた。
銀行員の達也は 残業が多く、平日はほとんど会えない。
土曜日の午後から 日曜日を一緒に過ごす。
実家暮らしの達也が、美咲の部屋に泊まる。
「達ちゃん、一人暮らししないの?」
美咲が聞くと、
「うん。家を出る理由、ないからなあ。」
と達也は笑う。
「東京生まれっていいな。」
美咲が言うと、
「そうかな。ごみごみしているよ。美咲の家はどんな所?新潟って寒いの?」
達也は無邪気に聞いてくる。
「寒いよ。雪も多いし。新潟、行ったことある?」
美咲の言葉に
「スキー場は行ったよ。美咲、スノボできる?今度、一緒に行こうよ。」
と達也は 屈託なく答える。
達也は美咲を束縛しない。
美咲の都合を優先して、無理強いはしない。
達也自身も、自分の都合を優先する。
お互いの都合が合えば 一緒に過ごして、体を重ね合う。
これで恋人なの、と美咲は思ってしまう。
いつも一緒に居たいとか 今すぐ会いたいとか。
そんな思いを持たないまま、達也との付き合いは 淡々と続いていった。