未明の三日月

「私達は 何もしていないよ。逆に 余計なこと言ったかなって 責任を感じていたの。」

麻有子は 20代の頃より、ずっと綺麗になっていた。
 
「ううん。智くんが、妥協って誰の為にするの って言ってくれたでしょう。だから私 自分に正直になれたの。」

壮馬君を 膝に抱く智くんは、美咲の方を向いて、
 

「でも、決めたのは 美咲ちゃんだよ。」

と優しく笑ってくれた。
 
「今日の美咲、すごく綺麗。幸せが顔に出ているよ。」

麻有子の言葉に、智くんも頷いてくれる。


美咲は頬を染めて、
 
「やだ、冷やかさないでよ。麻有子こそ 年々 綺麗になるわ。智くん どんな魔法かけているの?」

美咲が言うと、智くんは 心地良い声で笑った。
 


「美咲、斉藤主任も一緒に来れば良かったのに。」

麻有子は いたずらっぽく笑う。
 
「私もそう言ったの。でも 彼 シャイだから。冷やかされるの わかっているのよ。」

と美咲は微笑む。柔らかな笑顔で。
 


「美咲、幸せオーラ全開よ。」

昔、麻有子に言った言葉を 美咲は返される。
 
「もう、麻有子。」

と頬を膨らませた後で、美咲は続ける。
 
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