未明の三日月


「麻有子、運命の人ってなんだろうね。私佳宏のこと、10年も知っていたじゃない。何とも思わないまま。でも あの時 本当に この人しかいないって思ったの。すごく不思議だわ。」

麻有子は黙って頷く。
 
「ご主人の愛が 美咲ちゃんの心を 動かしたんじゃない?」

優しく言う智くんの言葉に
 


「そうね。タイミングが合うってことが、運命なんじゃないかな。」

麻有子は そう言うと そっと智くんを見つめた。
 


「ちょっと、何か熱いんですけど。新婚はこっちなのに。」

膨れて言う美咲に
 
「ごめん、ごめん。美咲ちゃん。ほら、俺達も運命の二人だからさ。つい自分達と重ねちゃったよ。」

と智くんは 陽気に言った。
 


「やっぱり麻有子達っていいな。私も、ずっと麻有子達みたいに 熱々でいたいなあ。」

美咲は ため息混じりに言う。
 

「麻有ちゃん、優しいから。美咲ちゃんも ご主人に ずっと優しくしてあげて。そうすれば、いつまでも 熱々でいられるからね。」

智くんの言葉に、美咲はコクリと頷いた。
 


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