港町 グラフィティー

音信不通

イライラが募る。
3日めの夜。

「おばさん こんばんは…聡君居ます?」
とうとう電話をしてしまった。

携帯電話なんか無い頃
家電する以外 本人を捕まえられない時代だった。

「ごめんね…居るんだけど…眠いって…部屋から
出てこないんだよ」
マジ申し訳なさそうなおばさんの声。

「いいよ…いいよ…わかった。」
ガチャンと受話器を下ろす。


それでも毎日バイトに行って 誘いは全て断り
ダッシュで家に帰る…
それで…電話の前で待っていた。

友達は馬鹿みたいだと笑っている。
そんなんどうでもいいや…笑ってりゃいいじゃないか。
私は聡がたまらなく好きなんだ。
押しかけても行けないくらい…好きなんだ。

出合ってから一年近くたってはいたけど
私は聡と…SEXもしていなかった。
キスまで…
勿論 あ…ここで勿論って変かもしれないけど。
私は処女ではなかったし
聡も童貞ではなかった。

いくらでもチャンスもあったけど。
何も起こらない。

一緒に夜を何度明かしても…手を握り合い
あの素敵にプクプクした唇で キスしてくれるだけ。

大切にされてる?

そうじゃない…

その行為を避けている
ようにしか…思えない。

あの朝の水色のちっちゃな…
物が目に焼きついて…

離れない。





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