愛溺〜番外編集〜



「うん、出たいなと思ってる」
「じゃあ瀬野も出なよ…って、瀬野は毎年出てるか!」

「え、そうなの?」

「そうなの?ってあんた…覚えてない?
リレーで瀬野がキャーキャー言われてたの」


その頃は他人に興味を抱かなかったため、誰が何の競技に出ていたのかすら覚えていない。

そうか、涼介はリレーにでていたんだ。


「じゃあ涼介は今年も出る?」
「うん、そのつもりだよ」

「瀬野はほぼ強制みたいなもんだよね。愛佳は100m走のタイム速かったのに、上手いこと交わしてたなぁ」


沙彩の言葉でなんとなく思い出した気がする。

体育で行った体力検査の結果を元に、私はリレーに出てくれないかと頼まれたのだ。


そういえば涼介も指名されていたような…?


「でも今年はやろうと思ってるから!」

「よかったね、瀬野クン。
今年は愛しの妻もリレーに出るって」

「つ、妻って何言って…!」
「これは一位取らないといけないね」

「あ、あんたも否定してよ!」


満面の笑みを浮かべて、否定も肯定もしない涼介。
動揺しているのは私だけだ。

ただそれ以上3人の会話が続くこともなく、涼介は自分の席へと向かった。


「はぁぁ…危なかったぁ」
「沙彩?本当にどうし…」

「愛佳、いい!?絶対に後輩くんの存在は瀬野にバレたらダメだよ!?」

「え、別に隠すこともない気がするけど」

「浮気になります!瀬野が怒ったらどうなるか、もう経験してんでしょ?私たちも怖いんだから瀬野を怒らせないで!」


確かに怖かったけれど、沙彩の方が怒った時の涼介に怯えている様子。

なんだか申し訳ない。
ここは素直に沙彩の言うことを聞こうと思った。

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