愛溺〜番外編集〜



「そうだよ。
予め天帝について話しておきたくて」


部屋には緊張感が張り詰めている中、私だけが【天帝】についてわかっていない様子。

聞ける状況でもなかったため黙っていると、それに気づいた涼介が説明してくれた。


「そっか、愛佳にはまだ話していなかったね。今までは俺たち【仁蘭】と【雷霆】、それから【煌凰】の3チームが争っていたけど、統一した今、俺たちと最も近い陣地にいるのが【天帝】という族なんだ」

「……うん」

「それで俺たち3チームが統一したことによって、天帝の動きが怪しくなってね」

「そこも統一するの?」
「それは無理だな」


てっきり統一に向けての話し合いかと思いきや、悠真くんが私の質問にすぐ答えてくれたけれど。

あまり良くない回答だ。



「無理…?」

「まだ確証はないけど、恐らく天帝のバックには組がいる」

「…っ!?」


悠真くんの説明に、思わず言葉を失う。
組ということはつまり、ヤクザということだ。


「そんな不安そうな顔、しないで?天帝も俺たちが統一したことに動揺しているだけで、争いはなるべく避けたいだろうから」

「どうしてわかるの?」

「いくら天帝のバックに組がついていても、俺たち3チームが合わせた時の人数は相当だからね。向こうも無駄な喧嘩はしたくないはず」


そのように話す涼介だったけれど、その顔つきは真剣だ。


「けど最近よく天帝の目撃情報が続いているから、恐らく相手は俺たちをマークしていることに間違いない。まずは天帝の総長である佐久間(さくま)と接触したいんだけど…」

「その佐久間って名前、多分偽名だよ」
「……え」


涼介の話を途中で遮ったのは翼くんだった。
いつのまにかゲームを終え、パソコンのキーボードを叩いていた。

< 33 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop