愛溺〜番外編集〜
「逃げる、準備はできてる?」
「……へ」
一応聞いてみる。
逃げる選択を取るか否か。
すぐには理解できていなかった彼女だが、小さく頷いた。
やっぱり目の前の男も敵なのだ。
けれど相当な危険人物であると本能で感じ取った私は、迷わず彼女の腕を引いて逃げる選択を取った。
涼介には悪いけれど。
本当に申し訳ないけれど。
近くを通ったタクシーを拾い、一緒に乗り込んだ。
途中、私たちは一度も振り返らなかった。
先ほど、何の前触れもなく突然男は現れたのだ。
いつ目の前に現れるのかわからず、それが怖くてタクシーに乗ることにした。
「はぁっ、はぁ…」
それでもかなり走ったため、ふたりして息が乱れる。
「もう大丈夫だよ」
互いに少し落ち着いてから、ようやく彼女に声をかける。
まるで小動物のように小さく、かわいらしい彼女はゆっくりと私に視線を向けてくれた。
「あ、あの…」
「これからどうしようか?あっ、私は川上愛佳って言います。あなたは?」
「あ、えっと…白野、未央です…!
さっきはありがとうございました…!」
白野、未央…どこかで聞いたことがあるような名前だ。
けれど全く思い出せず、きっと似たような名前を耳にしたことがあるのだろうと思うことにした。
それにしても、焦った様子の彼女を見て本当にかわいいなと思った。
なんだか彼女を見ていると、頭を撫でたくなる。