恋泥棒の犯行予告

まぁ喋りたい時もあるしな、とすべての話に丁寧に相槌を打ち、俺なりの答えを出したあと、お礼を言って教室に戻る。

楽しくないと言ったら嘘になる。

自分は17年分しか経験値がないけれど、色々な人の話を聞くことで少し得をした気分になれるから。


「お、日世じゃん」


階段を上っていると、上から突然声をかけられた。


「山口、バケツ持って何してんの?」

「今日授業中寝てたの叱られてさ、今からトイレ大掃除だよ」


ほんと最悪、と口を尖らせて言うのは1年のとき仲が良かった山口。

野球部のエースで明るく憎めないヤツだ。


「頑張れ。応援しかできないけど」

「お前の笑顔見れただけで頑張れるよ。じゃあな、勉強頑張れ」


こういうことをさらっと言ってのけるのが山口の怖いところでもある。

世に言うイケメンってやつだ。

< 199 / 259 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop