こぼれるほどの愛を、君だけに。【完結】
◆◇◆◇◆◇◆◇



「へぇ~。世の中捨てたもんじゃないね」


イケメン神様の話をすると、
充電し忘れていた張本人の穂香が
しれっと、前髪なんかを直しながら
いい女風に言った。
ったく~。


「で、名前は?」

『聞いてない』

「は? バカなの? ねえ、バカなの?」

『2回も言わなくていい』

「だって、普通聞くでしょ。
 それだけ助けてもらって
 さらにドリンクまで買わせて。
 こーこーせーに!
 なのに、名前すら聞いてない?
 はあ?」

『ちょっと。攻撃力高すぎ』

「そーゆーところなんだよね」

『何が』

「そーゆーところが、男運をポロポロ逃す、ってこと」

『男運? 何を今さら』

「女捨ててるね、完全に」

『ありがとう』

「褒めてない」



6年前。
20歳という花の女ざかりのとき、
大好きだった彼にフラれてから
私のなかで、何かが壊れた。


おしゃれも
女らしさも
恋愛も
全部まとめて砕け散った。
< 18 / 153 >

この作品をシェア

pagetop