如月の空の下、光る君を見つけた。
「詩央くん、久しぶり」


「あぁ」


「忙しかったんだよね。色々番組とか出てたし。今度ドラマもやるし」


「だから、言うなって。誰かに聞こえてたらどうすんだ」


「あっ、ごめん」



また怒られた。


陽翔くんが笑ってるから、詩央くんは怒りたいんだろうな。



「君はお喋りすぎる。少し黙るってことを覚えた方がいい。益々ブスになる」


「ブスって女性に対して失礼じゃない?」


「は?」


「私、詩央くんが見てきている中では最低ランクの顔面だし、スタイルは悪すぎかもしれないけど、それを面と向かって言われるとキツいねぇ」


「面と向かってなんて言ってない。目は反らしてる」


「そんなことイチイチネチネチ言ってたら嫌われるよぉ」


「うるせえ」



詩央くんは席に座り、ペンを動かし始めた。


私は人間の言葉を理解できない天才なのでプリントと筆記用具を持って彼の前の席に置く。


そして、机を回転させてドォン!



「うわっ!何すんだよ!」


「ここで勉強した方が集中出来るかと思って」


「最悪だ」


「最悪なことするのが私なの。でも、今日は最高なこともしてあげる。...ジャジャーン!授業ノートでーす!これ見ればすぐ終われるよ。1冊500円。見る?」


「見ない」


「はい、即答ぉ。ってことでなんと無料にしまぁす!見る人ぉ」


「誰にきいてんだよ」



ペンを持って目の前に突きだす。



「詩央くんに決まってるでしょ」


「どっかの探偵気取りか」


「うん。探ってるもん、詩央くんとの糸口」


「何いってんの?意味不明」


「意味不明でいいよ。ま、とりあえず勉強だね。はい、どうぞ」



ノートを彼の陣地に置く。


嫌がりながらもぺこっと頭を下げた詩央くん。


私は見逃さなかったよ。


やっぱり律義なんじゃないですか。


見直しましたぞ。


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