春の雪。喪主する君と 二人だけの弔問客

それは古き金庫に眠る

「それで、これ！！楽焼の染め付け体験談した銘々皿でーす。」

『丁稚羊羮』とは別の紙包みを、シオンは開けて、中のアイボリー地に紺の模様をした 小降りの皿を見せた。

一瞥し すかさず、ルイが 口を挟む。

「おまえなあ、なんだ？もーちょっと可愛げある、模様にしろよ。」

そんな、ルイの様子はレンは しげしげと、その皿を手に、あの松が植わっていた植木鉢をの柄を思う。
あの植木鉢も、こんな模様だったような…。

シオンは、ルイに べーっと舌を出しながら、ついでに『丁稚羊羮』を切り分け、

「べーっだよ！ これはね、『初代』さんとか、『二代目』さんの お皿っぽい絵にしたの！」

と言った。だから、

「日野以外に、信楽に行ったのって、それで だったのか？」

トンと、手にしてた皿をレンは 置きながら、問うてみた。
ルイが もう一度、皿をみる。

「なあ。祖父ーさんは、確か 陶器商だろ？でも、最初一族は酒業をしてたんだよな。まじ、分かってなかったっーのが、、」

そう言うと、ルイは いつもの癖で、頭を掻くのだ。

「俺は、お祖父様が どんな陶器を扱ってたかも、知らなかったんだね。」

レンも、残念そうにしている。
だから、シオンは 切り分けた『丁稚羊羮』を、一つレンの口に入れる。
「…懐かしい」

レン言葉を発したのを聞いて、シオンは 次に、ルイにも 一つ口に入れた。

「叔母さんは、どうしてレンやルイには 話さなかったのかなー。あたしには、本当のところ分からないよ。ただ、お祖父様の気持ちは 想像出来るかも。」

シオンは、残りの『丁稚羊羮』を口に入れてた。

「実はね、お祖父様は、うちの家に三つのモノを 保管してたんだ。」

各々、なんの意味があるのか？シオンも 最初は 全く想像もつかなかった。

祖父が シオンの家に置いていたもの。
古い金庫の中には、

印鑑、銘々皿、そして、ステンドグラス。
が、入っていた。