月下の輪廻
通路と通路を繋ぐ広めの空間に無造作に積み上げられた、太めの薪。先程、仕掛けで点いた燈台の炎。使えるかもしれない。

リーファネルは1度剣を鞘に納め、薪を取りに向かい、1本の薪に燈台の炎の火を移し、2体のスライムへとその火を浴びせた。

キィィィー......という妙な声とともに移した火によって、2体とも溶けていく。どうやら火が弱点のようだ。

《念の為持っていくか》

リーファネルは薪を持って、再び通路を進む。

遺跡の奥まで進む道中、出現する魔物はスライムだけ。

薪を持ってきておいて正解だったようだ。

途中、分かれ道などもあったものの、迷うことなく進み続け、やがて遺跡の最奥の扉の前まで辿り着いた。

《この扉の先にある》

何かの紋章が刻まれた扉にそっと手で触れてみる。すると、重い音とともにゆっくりと扉が開き始めた。

リーファネルは中へと視線を向け続け、何かが中央に立っているのが見えた。

どう見ても人間ではない。

トカゲのようでいて、その背には翼のようなものがあり、剣と盾を持っている。

頭の中に警鐘が鳴り響く。

《こいつはヤバイ!》

すぐに剣の柄を握り、扉が開ききるのを待つ。魔物の視線もこちらに向いていた。牙を剥き出しにして、低く唸っている。

ガタン!と大きな音を立てて扉は開いたものの、魔物に近付いてくる素振りはない。

でも。

こちらも退く気にはなれなかった。答えは簡単。ここに記憶の欠片があるから。
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