未来は霧のなか

「ねえ。土曜日、どっか行こうよ。」

ドーナツを 一つ、食べ終えて 亮太は言う。
 
「いいよ。どこ行く?」

私も、気分を変えて 笑顔で答える。
 


「遊園地。動物園。水族館。」

亮太は言う。
 
「遠足?」

私は、ケラケラ笑う。
 


亮太が 私とのデートに、色々 考えていたと思うと 感動で胸が高鳴る。


本当は嬉しいのに。

意地悪な私が顔を出す。
 


「もっと大人っぽい所は?」

残酷に聞き返す私。
 
「たとえば?」

温かい目で 私を見る亮太。
 


「美術館とか。ホテルのレストラン。」

得意気に言う私に 亮太は呆れた顔で笑い

「お前、10年早いよ。」

と言った。
 


亮太の言う通り。

私はただ、年相応が嫌だった。


背伸びしたいだけ。
 


「フン。どうせ子供ですよ。」

と頬を膨らます私を、愛し気に見つめる亮太。
 
「いいんだよ。そのうち、嫌でも 大人になるから。」

と言って。



亮太が 好きなのに。

亮太が 私を思ってくれることは 嬉しいのに。



私は、素直になれない自分に だんだんイライラしていた。
 
 



美佐子からは、何も 連絡がないまま 一週間が過ぎた。

私は毎日、亮太と一緒に帰った。
 

< 58 / 136 >

この作品をシェア

pagetop