上司は優しい幼なじみ
シャワーを浴びるという作業を短縮してこのまま出れば始業時間に間に合うかもしれないけれど、さすがにこんなぐちゃぐちゃの状態で会社に行くわけにもいかない。
翌日仕事を控えているというのに、あんな飲み方をしてしまって…猛省するしかない。
「あ、あの、たっくん!!」
部屋を出ていこうとしているその背中を呼び止める。
彼はゆっくり振り返った。
「ん?」
その目からは呆れたような感情は読み取れなかったが、迷惑をかけてしまったのは事実で。
ブランケットを背中から羽織ったまま正座になり、頭を下げた。
「その…迷惑かけちゃって、ごめんなさい。そもそもこんな状態になるまで飲んじゃった私に自覚が足りなかった。本当に、ごめんなさい」
しばらくの沈黙の後、たっくんが口を開く。
「まぁ…翌日の影響も考えず飲み明かしたのは決して褒められることじゃないけど…少なからず俺の原因でもあると思うし。でもまさか、陽菜があんな状態になるまでとは思わなかった。だから今回は、特別な」
顔を上げると、そこにはいつもの優しいたっくんの姿。
私を振ったことを気にしてくれているの…?
どうせなら、付き合ってほしかったけれど。
0か100かの関係を天秤にかけ、私は100になることを望んだ。
私は恐れていた。
100の重りが落とされ、物理的に0が上がることに。
でも、こうして私に向ける表情が、それを否定してくれた気がする。