上司は優しい幼なじみ
一次会がお開きになり、ぞろぞろと店から出ていく。
希望者は二次会に参加するようだが、意外と酔いが回っており私は遠慮した。
「あれ?岡田さんは行かないの?」
「今日は、ちょっと」
軽く言葉を交わし、半田さんは二次会メンバーの輪に入っていった。
真奈美ちゃんもいる。
ほんのり顔を赤らめながらも、様子を見る限りあまり変わっていない様子。
帰るメンバーは各々「お疲れさまでした」「お先です」と声をかけ、駅の方に向かっていった。
私も帰ろうと近くにいた人に挨拶して足を進める。
「ちょっと、陽菜」
腕をぐいっと掴まれ、反動で身体が後ろに倒れる。
掴んだ張本人の胸元に身体を預けるような態勢になった。
顔を上げると、困ったように眉を顰めるたっくんの姿があった。
「たっくん…」
「帰り待っててって、一人でいなくなるなって言ったよな?」
「あ…」
たっくんは私の両肩を優しく掴み、態勢を整える。
「二次会は…行かなくていいの?」
「陽菜が帰るなら俺も帰る。ほら、行こ」
手を握り、私を引くように歩き出した。