上司は優しい幼なじみ
会話はないけど、空気が心地いい。
こうやって二人きりになれるの、久しぶりだな。

そういえば、あの件…

「あの、たっくん」

「ん?」

「えっと…真由美ちゃん、宮田さんと二人で飲むの?」

目線が私に落とされた。
少し驚いたような顔を見せたが、すぐに前を向きなおす。

「聞いてたんだ」

「うん、たまたまなんだけどね」

彼の言葉の続きを待った。
しばらくして、その沈黙が破られる。

「…行かないよ」

その言葉に、今まで心に抱えていた不安がスッと消えていく。

「そっか…」

「宮田さんと仲良いんだな」

「うん。同い年で、何回かランチも行ってるの」

「そう。まぁ、陽菜は陽菜らしく変わらずやっていってほしいから、あまり気負いすぎないようにね」

繋ぐ手を二回、ぎゅっと握られた。
気づいていたのかな?私が気にしていたこと。

「…わかった。ありがとう」

頑張りすぎないようにしよう。
私は私らしく、自分に与えられた仕事の質を高めよう。

そう思った。
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