上司は優しい幼なじみ
出来上がったものをテーブルに並べていると、ちょうどいいタイミングでたっくんが戻ってくる。
髪に水滴が残っており、そこに色気を感じつつも、何もないふりをして偉そうに指摘する。

「たっくん、ちゃんと乾かさないと風邪ひくよ?」

「こんなのすぐ乾くし、大丈夫だよ」

私の言葉なんて無視して、テーブルに並ぶ朝食を見て目を輝かせた。

「すげー。うち何もなかったでしょ?色々準備してくれてありがとう」

「たっくんって、全然料理しない人?」

椅子に腰を掛け、恥ずかしそうにこめかみあたりを人差し指で掻いた。

「頑張ろうとは思ってたまーにやったりはしてるんだけど…俺には合わないみたいで」

何でもできる仕事熱心で頼りがいのある’大川係長’しか知らない人からしたら、このギャップに悶えるに違いない。

顔に出ていたようで、たっくんは怪訝な表情を浮かべる。

「…なんでニヤニヤしてる?」

「あ、いや…たっくんにも可愛いところあるんだなぁって思って」

そうだよ。一つくらい欠点ないと。
でも唯一の欠点が、’料理ができない’だなんて…神様も可愛いものだ。

「まさか陽菜にそんなこと言われる時がくるなんて思ってもみなかったよ」

厚揚げトーストを口に運び、驚いたように「うまい」と言う。
胸を張り、毎日のように作っていたと自慢気に話した。
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