上司は優しい幼なじみ
しばらくすると、その人ごみの中から私の知った顔が目に入り、安心感を覚える。日高部長だ。

その隣には、部長よりも20センチほど背の高い、すらっとしたスタイルの若い男性。


短めの黒髪がワックスで綺麗に整えられており、薄いグレーの縦縞が入ったネイビーの上品なスーツ。
部長と一緒にこちらに歩み寄ってくるその男性の顔立ちの良さが、近づくにつれて鮮明になる。

気のせいか、男性と目が合い、少し驚いたように僅かに見開いた、そんな気がした。



「岡田さんおはよう。待たせたかね?」


面接のときと同じ、穏やかな笑みを浮かべる。
加齢で少したるんだ瞼が更に落ち、細い線となる。それが安心する。
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