上司は優しい幼なじみ
オフィスのエントランスで、商品企画部の日高部長と待ち合わせになっている。
面接で一度顔を合わせたことがあり、とても物腰柔らかそうな50代の男性だ。

私の話すことにしっかり耳を傾け、笑顔で頷いてくれた、そんな印象だった。


待ち合わせの10分前、始業時間の20分前に到着し、日高部長を待つ。


オフィスには続々と社員が入ってくる。
たとえこの会社に5年ほど勤めても、恐らく全員の顔と名前を一致させることは不可能だろうと思わせるくらい、とにかく人が多い。

憧れの会社での勤務が始まることへの期待と、集団社会に呑まれないかの僅かな不安が同時に押し寄せてきた。緊張する。


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