上司は優しい幼なじみ
「さぁ、今日はそろそろ帰ろうか」
たっくんの声にぱっと顔を上げ、時計を見た。
時刻は22時を回っている。いつのまにこんなに時間が経っていたのか。
「すみません、待っていただいてたんですか?」
「まぁ、ほったらかしにするわけにもいかないから。さぁ、帰ろう。送っていくよ」
まだ続けたい気持ちはあったけれど、たっくんと一緒に帰れる喜びが勝る。
このわくわくした気持ちがばれないように必死に抑え、コーヒーを給湯室に片付けた。
「すっかり真っ暗になっちゃいましたね…私、時間のことなんてすっかり忘れていて、つい夢中になっていました」
助手席に乗り、シートベルトを締める。
たっくんはキーをさし、エンジンをかけた。
「陽菜、ぶつぶつ独り言いいながらやってたよ。入り込むのも悪くないけど、オンとオフの切り替えはしっかりね」
いつの間にかたっくんが幼馴染モードに戻っているから、私も話し方を変える。