ぜんぜん足りない。

頭がこんがらがってきた。


「ヘンな声なのに出していいの?」

「うん」

「嫌にならない?」

「おれの前だけでならいいよ」

「ほんとに?」


ソファーの上でこおり君を見つめる。綺麗に縁取られた二重の目がほんの少し細められた。



「おれ前から言ってるじゃん。桃音、声だけは可愛いって」


ヘンって言ったくせにそんなのおかしいよ。
そう思うけど、今は言い返す余裕なんてない。

酸素不足で苦しかったばずなのに、すぐにこおり君の熱が欲しくなる。



「じゃあ……じゃあね?」

「うん」

「これからもキス、いっぱいしていいよね……?」



こおり君の手をぎゅうっと掴んだ。

返事はない。

その代わりに唇が落ちてくる。


吐息が絡んで、くらくら。



「桃音が上手に誘えたら」

「……っん」

「このくらい、いつでも」



ぐったり、力が抜ける。

それでもキスはやめないで、体を支えてくれるこおり君に甘えた。

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