ぜんぜん足りない。


ぼやあ〜っとしてたから、一旦まばたきした。

ちょっとクリアになった視界の真ん中に、やっぱりこおり君がいる。



ええっと……。



「わたし、まだ夢の中?」

「はあ?」


「だって、こおり君が……いる」

「どうでもいいから、早く水」


飲め、って。

強引に押し付けられたコップを受け取った。


状況が理解できないまま、ゴクゴク……。


あ、おいしい。

って、そうじゃなくて。



「なんで、こおり君がいるのっ?」

「ここ、おれの部屋ね。わかる?」

「う……え?……あ、ほんとだ、」



シンプルイズベストの、殺風景な部屋。



「おまえ教室で倒れたの。覚えてる?」

「……、っあ」


そうだった、かも。

記憶、ないんだけど。

終礼中に意識が遠くなったんだった。




< 291 / 341 >

この作品をシェア

pagetop