年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
 この時、私の脳裏には、かつてお母様が囁いた台詞が反響していた。
『どうしてあの人がお前を助けて死ななければならかったの? 私の大切なあの人を返してよ、この人殺し』
 父と祖父母を亡くし、身を寄せたお母様の実家の伯爵家で、お母様は私に向かってこう言った。
 焼け崩れる工房で父は私を助け、犠牲になった。私はお母様から最愛の人を奪い、その上で命を繋いでいる。
 だから私は、お母様の態度に悲しむ資格なんてない……。
 ――バチャンッ!
 やがて息が続かなくなって、私は水面に顔を出す。
「……ねぇ、お父さん? 私には、お父さんの最期の言葉はとても難しいよ……」
 父は最期に、私が『お母さんの助け』になる事を望んだ。
「でもね、お父さん、本当は私もね……っ」
 ……私も、助けてって思っているよ? この状況から、誰かが助け出してはくれないかって、ずっとずっと思っているんだよ……。
「ぅううっ。ぅ、うっ……」
 涙はしばらく、止まりそうになかった――。


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