【過激派刑事ドラマ】四国州

【迷走】

南海道電力の経営破綻の記者会見があった翌日のことであった。

社内があわただしくなっていた。

ストライキを起こしていた従業員さんたちは、記者会見の翌日から契約者からの問い合わせや契約解除の手続き業務などに追われていた。

しかし、州内にある発電所と変電所の管理維持の問題が残っていた。

発電所と変電所は、伊方原発以外は発電所がある各自治体やガス会社が管理運営をすることができるので問題はなかった。

伊方原発は国の原子力規制の機構の管理になるが、運転停止中になっている。

運転を再開するためには、西四国市の市長と四国州知事の同意を得なければならない。

西四国市の市長が運転再開を拒否しているので、宙ぶらりんになっている。

伊方原発は、完成してから40年くらい営業運転をしていた。

しかし、東日本大震災による巨大津波で福島県の沿岸部の原発が深刻な事故を起こしたイキサツがあった。

原発立地の西四国市の反対派の住民グループに加えて、西四国市の市議会や州議会や州知事が激しく抵抗したので、中央省庁との間にアツレキが生じた。

それなのに、州知事はボウカンしていた。

今の州知事は、先行して道州制が導入された直後に州知事になった元香川県知事が南海道電力の経営陣とグルになってた上に、関西のやくざ組織のナンバー2と交遊関係があった。

その上にまた、国政選挙の折りに歴代の総理大臣だった男の家から謝礼名目で献金を受け取っていた…

イビツな政界スキャンダルが明らかになったので、マスコミからの取材攻勢から逃れるために行方不明になった。

州知事が不在となった今は、副知事が代行を務めている。

副知事は、原発反対を激しく唱えている。

州議会で、初代の知事の派閥の議院数人をリコールした。

だから、伊方原発の廃炉が確実な情勢になった。

そんな中であった。

今治東区の田島組で一番ワルのT原が、服役していた北海道根室支庁の刑務所を仮出所した。

仮出所後は、療養のために松山の州立ガンセンター(道州制が導入された後は国立から州立に移行されている)へ移って、末期医療を受けることになった。

本部長からの話によると、T原は脳幹部にコブシ大の大きさの腫瘍があった。

手術が出来ない状態におかれていたので、刑期を停めて療養に切り替えることになったと本部長は言うた。

南海道電力の副社長のひとり娘の安否が分からない中で、T原に関する情報が入って来た。

新たな事件が起こる危険性をはらんでいたので、オレの気持ちは動揺していた。

それから数日後のことであった。

T原は、北海道警の刑事たち50人に連れられて根室支庁の刑務所を出て四国州へ向かった。

根室中標津空港から航空機を2回乗り継いで羽田経由で福岡空港まで行った。

その後、山陽新幹線に乗って博多駅から広島駅へ行った。

広島宇品港から高速船に乗って四国州へたどり着きました。

四国州特別区を通らずに、大回りをして松山に到着することができた。

しかし、問題は松山観光港から州立ガンセンターまでの道中である。

オレがどうして危険性をはらんでいると言うたのか…理由はふたつある。

ひとつは、万が一護送中にT原を奪還するために組の連中が護送車を襲撃する恐れがあること…

もうひとつは、トイレのために途中でおりた場所でT原が脱走をはかる危険がある…

…と言うことである。

T原は、北海道警の刑事たちと一緒に護送車に乗って松山観光港を出発した。

護送車は、主要州道から松山市内の環状線から旧国道を通って、州立のガンセンターへ向かった。

しかし、旧国道に入った辺りからT原は落ち着きのない表情をしていた。

(カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン…ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)

いよてつ平井駅の近くにある踏み切りで護送車がふみきり待ちで停車をしていた。

この時、T原は刑事たちに『気分が悪くなった…吐きそう…』と言うた。

刑事たちは『もう少しだから辛抱しろ!!』とT原に怒鳴りつけた。

しかし、T原が『もれそう…』と言うた。

護送車は、いよてつ平井駅から400メートル先のガソリンスタンドで途中停車した。

T原は、ガソリンスタンドのトイレへ行った。

事件は、その時に発生した。

「課長!!」
「ああ!!T原!!」

T原は、警備が手薄になっているところを見てその場から逃走をはかった。

T原が逃走をしたと言う知らせを聞いたオレとダンさんとオノさんは、急いで現場へ急行した。

警備が手薄になっているところを見て逃走をしたT原は、やっと自由になれた…仲間の元へ帰りたいと言う一心で逃げ回っていた。

その時であった。

(キキキキキキキ!!ドスーン!!)

T原は、交差点から飛び出して来たグレーのトヨタアルファードにはねられた後、頭を激しく打ち付けてその場で亡くなった。

アルファードを運転していた男は、頭がサクラン状態におちいった後、その場から逃げ出した。

オレとダンさんとオノさんが現場に到着したのは、それから15分後のことであった。

現場には、事故を起こしたトヨタアルファードが置き去りにされていたのと亡くなったT原が倒れていた。

オレとダンさんとオノさんは、すぐに所轄の警察署に連絡して、現場確保をお願いした。

それから20分後のことであった。

所轄の警察署の警察官たちが事故現場に到着したあと、現場検証を始めた。

オレは、パソコンを開いて事故を起こしたアルファードの所有者の検索した。

ダンさんはオレに『車の所有者は分かりましたか?』と聞いた。

T原をはねたトヨタアルファードの所有者が松山市愛媛区(松前町の部分)の建材店を経営している男性のひとり息子さんの名義であることが判明した。

「達雄さん。」
「もしかしたら…盗難車の疑いがあると想う。」
「盗難車…」
「念のために、所有者の人に確認をとろう。」

ダンさんとオノさんは、松山市愛媛区にある問題のアルファードの所有者の住所地へ向かった。

オレはこの時『盗難車の疑いがあるかもしれない…』と言うたけど、もしかしたらちがうかもしれないと想っていた。

ところ変わって、愛媛区にある建材店にて…

店内に入ったダンさんとオノさんは、経営者の男性にこう言うた。

「すみません…こちら、A沢建材でございますね。」
「そうですが…あなたたちは…」
「四国州警ですが…お宅のひとり息子さんの名義のトヨタアルファードが交通事故を起こしました…はねられた男性は…刑務所で服役していた男で…州立のガンセンターへ護送中にはねられて亡くなりました…すみませんけれど、息子さんに会わせてくれまへんか?」
「えっ…うちの息子が…ひき逃げ!!…刑事さん…うちの息子は…今…」
「いいわけしてもあかんで!!」
「ダンさん!!落ち着いて下さい!!」

ダンさんは、ひどくコウフンした状態であったので、おだやかに話し合いができなかった。

結局、事故を起こしたアルファードの所有者が不在だったので、詳しいことを調べることができなかった。

その頃オレは、事故が発生した交差点に設置されている防犯カメラの分析をしていた。

設置されている防犯カメラの画像を繰り返して解析をして行くうちに、T原をはねたアルファードを運転していた男が明らかになった。

オレは、急いで男の身元の割り出しを始めた。

すると…

「捜索願いが出ていた…もしかしたら…この男は…」

T原をはねた男は、山口県警の生活安全課から捜索願いが出ていた無職の男であった。

それを知ったオレは、さらに不安をつのらせた。

ダンさんとオノさんは、オレからの連絡を受けて、T原をはねた男の捜索に入った。

事故の翌日から、ダンさんとオノさんとオレは松山市内で問題の男を見なかったかどうかの聞き込みをしていた。

しかし、発見につながる有力な手がかりがないので、難航を極めていた。

一体、男はどこへ行ったと言うのだ…

早いところ見つけて、しめあげないと…

オレの気持ちは、さらにあせっていた。

それから3日後のことであった。

T原をはねた男は、松山市東温東区(川内町の部分)の山奥に潜伏していたが、スズメバチに刺されて亡くなったと言う結果に終わった。
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