Your Princess
第4章 謎の男、登場。それから・・・
クリスさんは牢屋から出ることができて。
サクラさんは大喜びだった。

それ以降、私が脱走したことや。クリスさんが牢屋に入ったことについて。
口に出すことは許されなくなった。
クリスさんに謝っても「もう、その話はいいよ」と言われてしまう。
どうして、誰も私を責めないのだろう?
言われないなら、言われないで。
哀しいし、傷つく。

蘭のお嫁さんになって身分が高くなったとはいえ。
誰かを傷つけることなんて決して許されることではないのに。
私は自分のことしか考えてなかった。
愚かだな、私。
自己嫌悪でいっぱいになる。
色んなことが頭の中でぐーるぐると回っていて。
何もかも、考えるのを辞めたくなる。
「ライト先生、お疲れ様でした」
玄関で先生に別れを告げる。
授業が終わると。すぐにバラ園に行くのが私の日課になった。
蘭にフェイスベールを奪われてから、この二か月素顔のままだ。
シュロさんは、毎朝会うたびに「うぉ」と驚くのだが。
それにも慣れてしまった。
クリスさんと渚くんは「綺麗」だとか「今日も可愛い」とほめてくれるけど。
お世辞だってことはわかっている。

バラ園を訪れてみたけど。
今日は珍しく誰もいなかった。
いつもだったら、渚くんは絶対にいるのに。
「おかっしいなー」
と思い、バラ園をうろうろしてみたが。
渚くんとクリスさん。それどころか、ビビまでも現れず。
結局、部屋に戻ることにした。

玄関前まで歩くと。
蘭の声がしたので。
帰ってきたのかなと思い、門のほうへと目をやる。
蘭はビックリするぐらい声が大きい。
私に対してだけ大声なのかと思えば。
日常会話が既に大声らしく。
どんなに遠くにいても、蘭の声は響き渡る。

門の前には、やはり蘭がいた。
黒っぽいスーツ姿だ。
だが、驚いたのは蘭が誰かと話していたことだ。
見たことのない男の人だった。

蘭と背丈は同じくらいだろうか。
金色の髪がサラサラとなびいていた。
目元には大きなサングラス。
だから、素顔は見えない。
白いシャツにズボン。
護衛の人かな? 

思わず、じっと眺めていると。
サングラスをかけた男の人が、こっちを見た。
続いて、蘭も私を見た。
「おいっ、あっちいってろ」
蘭は、怒った顔で私に言った。
「…ごめんなさい」
猛スピードで家の中へ入る。

もしかしたら、蘭の顔に泥を塗ってしまっただろうか。
心臓がドキドキとする。
私がお嫁さんだって紹介するのも、恥ずかしいんだろうな。

それにしても。
あのサングラスの男の人。
どこかで、見たような・・・?
スペンサー家で働いていた人かな。

「カレン、何ぼーとしてるの」
突如、サクラさんに話しかけられて我に返る。
「いえ、何でもないです」
私は急いで、部屋へ戻ることにした。
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