Your Princess
ドキドキしながら、蘭を見る。
蘭の整った顔は、美しいと思う。
私は痣から手をはなした。

「俺とローズは兄弟だ」

蘭の言葉に、私は表情を崩さず「そうですか」と言った。
蘭の眉間に皺が寄る。
「おまえ、それも知ってたのか?」
蘭の声が大きくなる。
「なんとなく…、蘭とローズさんって似ているから。そうなのかと」
これは、誰から聴いたわけでもない。
何となく気づいていた。
見た目は違うけど。
同じ碧い瞳の持ち主。そして、どこが似ているかはわからないけど。
同じ冷たい雰囲気を持つ蘭とローズさん。

蘭はがっくりとうなだれた。
「結構、勇気出して言ったんだけどな。おまえは本当にアズマと同じで賢いな」
「……」
賢くはない。
だけど、余計なことは言わないほうがいいと思い。
黙った。

「俺とローズは母親が違う。ローズの母親は正妻。俺の母親は・・・」
蘭は唇を噛んだ。
シュロさんが言っていた「愛人の子」
蘭は口に出すのが嫌なのだろう。
「俺の母親はローズの母親にずっと疎まれてきた。そのお陰で俺自身もずっとローズの母親に命を狙われてきた」
「え・・・?」
「アズマは、ローズの母親関係の者に殺されそうになった俺を助けたんだ」
「お兄様が…?」
夢に出てきたお兄様の姿が浮かんだ。
「ずっと、ローズの母親達に狙われてきた。でも、やっとこの前、ローズが当主として跡を継ぐことが決定したんだ」
「……あの。蘭」
一つの疑問が浮かぶ。
「蘭は、スペンサー家の当主なわけで。もう、ローズさんの家の跡取り問題には関係ないんじゃないの?」
「…そうもいかないんだ」
蘭はまた、ため息をついた。

「詳しくは言えないけど…。俺は死ぬまでローズの母親達に恨まれて生きていく運命らしい。だから…、俺はおまえを安全なところに住まわせたい」
「……」
ふと。「おまえの自由にしろ」と言った言葉は一体、どこに行ってしまったのだろうか。

私がじっと蘭を見ると。
「俺はおまえに嫌われようが、何を言われようが。はじめから、おまえを手放すつもりはない」
自信に満ち溢れた蘭の表情が目の前にあった。
「一年。全員、離ればなれになるが。おまえと俺は夫婦であるのは変わりない」
「……」
はじめから、そういうつもりだったのか。
私はうつむいた。

色んなことを言って。
惑わされたけど。
蘭の気持ちは一つらしい。
信じられるものかと思うけど。
言う通りにするしか道はないと感じた。

「落ち着いたら、おまえを迎えに行く。それまで、おまえのままでいろ」

おまえのままでいろ。
不思議な言葉だった。
ぽかんとしたまま、蘭を見ると。
蘭は意地悪そうにこっちを見て言った。
「ついでに、俺のことを好きになれっ」

この俺様気質の男を。
好きになれる日は、来るのだろうか?





終わり…?
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