求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
「日奈子……結婚の話は無かったことにして欲しい」

「え?」

日奈子がきょとんと目を瞬く。多分遥人の言葉が思いもしないもので理解出来ていないのだ。

罪悪感に苛まれながらも、遥人ははっきりと言い切る。

「俺には日奈子とやりなおしたときの記憶がないんだ。俺にとって日奈子は過去に別れた相手で、身近な存在ではないんだ」

日奈子は遥人の言いたい内容に気付いたようだ。顔からは笑顔が消え、勢いよく座っていたソファーから立ち上がった。

「それは前に聞いたし、私は記憶が無くてもいいって言ったでしょう? 今好きではなくても、いつか好きになるかもしれないのだから」

「ああ。その時は日奈子が望むなら、関係を変えないようにする方がいいと思った。でもそれは間違いだったと気付いたんだ」

日奈子は眉根を寄せる。

「どうして? 何が問題なの?」

「義務感だけで結婚しても幸せになれないと思わないか? 二カ月過ごしても日奈子に特別な感情を持てなかった。この先もし記憶が戻っても、以前と同じ気持ちになれるとは思えない。過去を忘れて過ごしているこの瞬間も感情は動いている。思い出したから元通りになんて絶対ならない」

日奈子は信じられないと言うように、目を見開いた。
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