求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
12 取り戻した記憶 遥人side
遥人は結衣のマンションを出ると、駅までの道を急ぎ進んだ。


昨夜は思いがけないことの連続だった。

事故の日の真実と、結衣がどれほど傷ついていたのかを改めて知ることになった。

彼女の慟哭は遥人の胸に迫るものだった。この先は何があっても彼女を守ると強い決意が生まれるほどに。

気持ちの高まりを抑えられずに結衣を抱いた。
彼女も強く遥人を求めてくれて、今までで一番幸せで満ち足りた時間を過ごした。

今、ますます彼女への想いが高まっている。


ただ結衣の部屋に寄りたいと言い出したのは遥人だが、そのときは抱くつもりはなかった。

クリスマスプレゼントを渡し、改めて想いを伝えたいと思っていただけだ。

笑顔を見せながらもふとした拍子に不安そうな顔をする彼女に、安心して貰いたかったからだ。

(そう言えば、渡し損ねたな)

遥人のビジネスバッグの中にある結衣へのクリスマスプレゼント。

シンプルなダイヤのピアスは、彼女に似合うものをと時間をかけて選んだものだ。

偶然にも、自室の机の引き出しに仕舞いこんであるネックレスと雰囲気が似ている。

やはりあのネックレスは結衣の為のものなのだ。ピアスと合わせて結衣に贈ろう。

処分に困り憂鬱さを覚えていたあのネックレスが、今となっては大切なものに感じる。

ただその前に、はっきりしなくてはならないことがある。

北桜日奈子の件だ。

結衣には日奈子に対して酷いことをしたと言ったが、正直そうは思っていない。なぜなら。

(彼女は嘘を吐いている)

恐らく自分達は恋人関係ではなかったのだ。一時婚約していたのは確かだが、よりを戻してなどいない。

そもそも婚約と言っても実態の伴わないものだった。別れたあとも思い出す機会もなかったのだ。

なぜ日奈子が嘘を吐いているのかはっきりさせなくてはならない、必ず。
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