未明の三日月 ~その後

ずっと仕事をしてきた美咲は、詩帆と二人きりで 家にいることも苦痛だった。

詩帆の首が座るまでは、最低限の 外出しかできない。


一日中、詩帆と二人で 寝たり起きたりしている自分に 美咲は焦りを感じた。
 

5月生まれの詩帆。

首が座る頃、外は 真夏になっていた。

美咲と詩帆は、エアコンの効いた部屋から 出られない。
 


「今日も暑かったね。」

と佳宏が 帰って来て言う。
 
「私達、ずっと家にいたから。」

美咲が きまり悪そうに言うと、佳宏は苦笑する。
 

「美咲、飽きるでしょう。週末は どこかに行こうか。」

佳宏は優しい。
 
「えー。こんなに暑いのに。詩帆ちゃん、かわいそうだよ。」

でも美咲は、佳宏の好意を喜べない。
 


夕方 佳宏が帰る前に 美咲は 詩帆を お風呂に入れてしまう。

仕事で疲れた佳宏を ゆっくりさせてあげたくて。


美咲は、いつの間にか 佳宏を 育児から疎外していた。


そして 部屋着のまま 佳宏を迎える美咲。


自分は 病人のようだと思いながら。
 


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