【完】淡い雪 キミと僕と
そしてもうひとつ、変わった事と言えば
美麗の両親ととても仲良くなった。
美麗ママとはラインのやり取りをする’お友達’だし、週に数回夕ご飯にも呼ばれる。何でもいっぱい食べてくれる男の子が好きなんだとよ。俺はどちらかといえば小食な人間だった筈だが、美麗ママの料理は不思議な事に沢山食べる事が出来た。
そして、美麗パパとはスポーツという共通点があって、休日にたまに一緒に出掛ける。もしも美麗が男の子だったら野球を教えてあげる事が夢だったんだ、と語る彼は、社会人野球チームなんて作っていて、その仲間に俺をいれてくれた。
この俺が庶民とキャッキャッ騒いで野球など…と思ったんだけれど、案外楽しい物だ。
美麗の両親はえらく俺を気に入ってくれていたが、それ以上に彼らを気に入っていたのは、自分だったのかもしれない。
家族での団欒も、父に野球も、教えて貰った事はない。彼らと過ごす時間は、雪と過ごす時間並みに癒しになっていたのは間違いないだろう。
そして本日日曜日。
美麗の父親が野球観戦のチケットを買ってくれた。
一緒に行こうと誘われた時は、もっとVIP席のチケット手に入るよ。と思った。それは関係者に頼めば、簡単な事だっただろう。
彼がくれたチケットは普通の席。おいおい、ゴミのように人が溢れている場所で、ギャーギャー煩い声を聴きながら観戦しなくてはいけないのかよ。と
けれど美麗パパはそれがおつなのだ、と言った。
球場までは美麗ママが送ってくれた。迎えも来てくれるらしい。俺の車で行きましょうよと言ったら、ビールが飲めないじゃないかッ!と拒否された。
ビールは野球観戦のセットになっているらしい。彼曰く、だが。