【完】淡い雪 キミと僕と
8.美麗『ちょっと…あまり顔を近づけないで…』

8.美麗『ちょっと…あまり顔を近づけないで…』




3か月。

それはたった3か月の出来事だった。季節が1回通り過ぎただけの事。

それでも自分の中で大きく変わった事がある。

まずは雪が家に来た事。そしてあの失礼な男、西城大輝と頻繁に会っているという事。人をからかう事を生業とし嫌味ったらしく、優しさの欠片もないような酷い奴だとは思っていたけど、わたしはもう西城大輝という人間が世界で1番嫌いな男ではなくなっていた。

それはちょっぷり悔しいし、心外。でもあいつにだって良い所は沢山ある。

そして最近、井上さんの様子も変わりつつあった。

この3か月、見るに堪えないといった感じで分かりやすく落ち込んでいた。いつになくボーっとしていたり、かと思えば自分を奮い立たせるように何かを自分自身に言い聞かせているように見える時もあって

見ているこっちの方がハラハラした。けれど、わたしは見守ろうと決めた。彼と、彼女の恋の行方を。



そんな井上さんが、最近何やら嬉しそう。この人がそんな顔をする時は、決まって彼女の存在が見え隠れする。


スタイルの良い人は、スーツがとても似合う。

井上さんもそのひとり。180センチを超える身長に加え、小顔。少しだけ猫背で自信が無さそうな所は変わらない。

くっきりとした二重瞼。スッと通った鼻筋に、薄い唇。やっぱり傍から見れば、わたし好みだ。

今日もロビーを携帯片手に歩いていて、画面に釘付けになっているかと思えば、歩いている人にぶつかり、変な顔をされている。

ぶつかった拍子に、床には散らばった資料。それを慌てて集める。

「はい、どうぞ」

「あ、ありがとうございます!って、山岡さんかぁ~」

顔を上げた井上さんはとてもとても優しく笑うから、今でもこの人を好きになれて良かったと思える。

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