【完】淡い雪 キミと僕と
14.美麗『いきなり旅行に行くなんて強引だと思うわ。』

14.美麗『いきなり旅行に行くなんて強引だと思うわ。』




彼の思いなど知らずに、浮かれまくっていたと思う。

約束通り毎日のように家にやって来てくれて、夢のような生活。

ほぼわたしの家で過ごした。ふたりで雪と遊び、一緒に料理の本を見て夕ご飯を作って、一緒に眠る。

彼は飽きもせずに、毎日のようにわたしを抱いた。…その時間はとても幸福な物だった。思い出してもニヤケてしまう程、西城さんはわたしを大切に扱ってくれる。

幸せとはこういう事を言うのね。

「…さん!
山岡さんったら!」

頬杖をつきながら宙を見上げていると、千田ちゃんの片方の手が視界に入って、それを縦に振っている。

慌てて背筋を伸ばし、彼女の方を向く。

「どうしたんですか?ボーっとしちゃって。」

「え?!いや全然、さっ仕事仕事」

「山岡さんったら変なの。全然わたしの話を聞いてくれないし…」

「え?ごめん!なんだっけ?」

「だから、雪村さんの事ですよぉ~」

雪村さんとは取引先の方で、千田ちゃんの想い人だ。

この間の休日も彼女とランチして、恋の相談に乗り、その後に新宿に行って、デートの洋服選びを手伝った。

彼女が手に取ったのは控えめだけど女の子らしい、白いワンピースだった。それはとても彼女の雰囲気に合っていて、お似合いだった。

「どうだったの?デート。上手くいった?」

「わたしったら自分から告白してしまって…。山岡さんから告白は男性の方からさせるものよ、ってアドバイスを頂いたと言うのに…」


< 428 / 614 >

この作品をシェア

pagetop